執念なきものに発明はない…「チキンラーメン」が生まれた瞬間
【連載】「あの名言の裏側」 第7回 安藤百福編(2/4)「ひらめき」は身近なところにある
さっそく、味付けした麺を針金と金網を使って自作した型枠に入れて、油で揚げてみたところ、麺はほぼ完全乾燥となり、長期保存にも耐える状態になりました。また、お湯を注ぐと、麺の表面にできた細かな穴から水分が吸収され、柔らかく復元されました。大ヒット商品「チキンラーメン」の原型が完成した瞬間でした。
この麺を油で揚げる製法は「瞬間油熱乾燥法」と命名され、即席麺の基本的な製法特許として登録されることになるのです。
安藤氏は、印象的な言葉をのこしています。
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発明はひらめきから。ひらめきは執念から。執念なきものに発明はない。
(安藤百福発明記念館編『転んでもただでは起きるな! 定本・安藤百福』より)
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安藤氏の開発姿勢をひと言で評すなら「執念」に他なりません。その献身と精神力に脱帽せざるを得ないでしょう。しかし、「常人には真似できない」と軽々に他人事にしてしまうのも、少し違うような気がします。結局、安藤氏がインスタントラーメンの開発に成功したのも、日々の積み重ねがあればこそ。失敗のなかから微かな光明を見出し、昨日より今日、今日より明日と前に進み続ける。そうした姿勢を失わなければ、人は成長し続けること、大きな仕事を成し遂げることができるのだ──安藤氏は自身の体験を通じて、我々にそう語りかけているように思えてなりません。
誰にとっても挫折は恐怖であり、失敗は痛いもの。だから人はすぐに「心が折れた」「もういい。諦めた」などとのたまい、挫折や失敗から逃げようとします。しかし、逃げてしまっては、そこから1ミリも前に進みません。ときには、足がすくんで立ち止まってしまったこともあるでしょう。ただ、それでもせめて前だけは向いていたいものです。
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